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とびひとは
とびひとは、細菌が皮膚に感染することで発症する、感染性の皮膚疾患です。とびひの正式名称は、「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」といいます。膿を含む水ぶくれ、さらに水ぶくれが破れた後に厚いかさぶたができるのを主な症状とします。
とびひの感染力は非常に高く、患部に触れた手や衣服・タオルなどを介して、あっという間に全身へ症状が広がっていきます。まるで火事の火の粉が飛び火するように次々と広がっていく様子から「とびひ」と呼ばれます。
とびひの原因
とびひの原因は、「黄色ブドウ球菌」や「溶血性連鎖球菌」の感染です。
これらは元々、健康な人の皮膚表面や鼻の中、喉などにも存在することのあるありふれた細菌ですが、あせもや虫刺され、小さな怪我や傷、皮膚炎など、さまざまな条件下で皮膚に微細な傷が生じたり,皮膚のバリア機能が落ちたりしているところにこれらの病原細菌が入り込んで、とびひを発症することになります。
特に乳幼児や、アトピー性皮膚炎を発症している人は、細菌をはじめとした外部の刺激から肌を守る機能が弱いので、とびひの症状が見られやすいです。
とびひの症状
とびひには、主に2種類の病型があります。
1.水疱性膿痂疹(すいほうせいのうかしん)
大型の破れやすい水ぶくれができるタイプのとびひで、黄色ブドウ球菌が原因で発症します。
黄色ブドウ球菌は目,鼻,口の粘膜に取り付くことが多いため,発症初期には目・鼻・口の周囲から発疹が始まることが多いです。最初はポツポツとした小さな水疱ができ、そこを掻きむしるなどして水疱が破れると、水ぶくれが広がり、周りが赤くなっていきます。さらに、水疱の中に膿が溜まる(膿疱:のうほう)こともあります。水ぶくれや膿疱がつぶれると、内部の滲出液中に含まれる細菌によって、体のあちこちに症状が広がっていきます。とびひの多くがこちらのタイプです。
2.痂皮性膿痂疹(かひせいのうかしん)
厚いかさぶたができるタイプのとびひです。溶血性レンサ球菌が原因で生じるのが一般的ですが、黄色ブドウ球菌の感染が合併している場合も少なくありません。
皮膚の一部に膿をもった膿疱(のうほう)と呼ばれる水ぶくれができ、それが破れた後に厚いかさぶたを形成します。炎症が強く、かゆみ・痛みを伴い、ひどい場合は発熱・のどの痛みといった症状が出ることもあります。また前述した水疱性膿痂疹では乳幼児の発症がほとんどですが,痂皮性膿痂疹では季節や年齢に関係なく発症がみられるのも特徴です。
とびひの治療法
とびひには、抗菌薬を含んだ塗り薬などを使用し、原因となる細菌を退治するための治療を行います。とびひの症状がひどい場合には、痒みを抑える抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬(飲み薬)や、患部を保護して炎症を抑える亜鉛華軟膏(あえんかなんこう)を処方することもあります。
とびひの拡大が広い範囲に広がってしまっている場合には,抗菌薬の内服が必要です。セフェム系の薬剤を5~7日間ほど内服することで完治するのが普通ですが,薬剤抵抗性のブドウ球菌(MRSAなど)が原因となった場合には,病変部から原因菌を採取,培養し,薬剤感受性試験を行って,その結果を参照しながら適切な抗菌剤を慎重に検討する必要があります。
かゆみが強い場合や無意識にかいてしまう場合には、包帯やガーゼなどで患部を覆い、症状が広がるのを防ぐようにしましょう。掻きむしったり、滲出液のついた手で他の所を触ったりしないようにすることが大切です。
とびひの対策
とびひは、感染力が非常に強いため、周りの人に移さない・移されないように細心の注意が必要です。
- 手をよく洗って爪は短く、皮膚を清潔に保つ
- タオルを共用で使わない
- お風呂は他の家族が使用した最後に入り、入浴後は浴槽や用具を洗浄する
- 食器は家族であっても別の物を使う
- 鼻の中には細菌が多く存在するので,手で鼻の穴をいじらない
- 皮膚に傷がある時は、掻きむしらないようにガーゼなどで保護する
- 普段から保湿、スキンケアをして皮膚のバリア機能低下を防ぐ
日頃からこれらの項目を習慣づけることが、とびひの予防に効果的です。
もしも子供がとびひを発症しても、通常は登園・登校が禁止されることはありません。
ただし、周りのお友達にとびひを移さないよう、患部を包帯等で覆って直接触れないよう工夫して下さい。
またとびひは夏季に流行しやすいため、水泳の授業の時期と重なることが多いですが、症状が軽快するまではプールに入ることを控えましょう。